【前回のあらすじ】
就職活動中のフロ子は「働くためのもっともらしい理由」を自分が探していたことに気が付いて…。
翌日、フロ子は大学の就職支援センターへ向かった。
「就職についてご相談したいことがあるんですが、お話を聞いていただけませんか?」
窓口でハキハキと話すフロ子は、数ヶ月前までのフロ子とは別人のようだ。だが、その変化を気づく人はいない。なぜなら就職支援センターには今日はじめて訪れたからだ。
「過去に相談されたことは?」
「ありません! でも今日からよろしくお願いします!」
「元気がいいですねー。ちょっとお待ちくださいね」
しばらくすると、奥からメガネをかけた細身の三十代半ばくらいの男性がやってきた。
「就職支援センターの松宮です。こちらへどうぞ」
そうボソボソと話す松宮は、フロ子をパーテーションで区切られたテーブルに通した。松宮はどういった要件で来たのかをフロ子に訪ねた。
「私はこれまで就職について積極的に考えてきたことはありませんでした。でも、就職活動を通じて『働くということをもっとシンプルに考えればいい』と思うようになったんです。そう思えば職種にこだわらず幅広く働く場所の可能性を考えられると思って。もっと色んな仕事に目を向けたくてここへ来たんです」
松宮はフロ子が話終わってからもしばらく微動だにせず黙って座っていた。フロ子があの…と言いかけたときに松宮はため息を吐いてからようやく口を開いた。
「大変失礼ですが…アナタが大学で学んできたことは、そんな安っぽいものなのですか?」
(つづく)