人プロつーしん

by 人材プロオフィス株式会社

私はビール、あなたは何?【プロ子の野望 第十二話】

【前回のあらすじ】
就職活動中のフロ子は「働くやり甲斐」を求め答えを探し、苦手にしていた母親に電話をかける…

 就職活動中であること、働き甲斐に関して疑問を感じていること、その答えを探していること。フロ子ができるだけ簡潔に自分の状況を伝えている間、電話口からは「グビッ・グビッ」と母親がビールを飲みくだす音が聞こえていた。

 フロ子の母親は昔から大のビール好きだった。そのようすを間近に見てきたフロ子が二十歳を迎え初めてビール飲んだ時の失望感は底知れなかった。母はこんなに苦くマズいものを毎日美味しそうに飲んでいたのか…と。
「どう思う?」
 フロ子は母親の喉の音が静まってから聞いた。
「アンタはどう思う?」
 質問に質問で返されたフロ子は黙ってしまった。
「別に意地悪してる訳じゃないよ? アンタが今、何を感じていて、何を思っているかを知りたいだけ」
「私は…正直、夢なんてないけど、一人で誰にも干渉されない暮らしを続けていきたいし、そのためには働かなくちゃいけないし、そこにはやり甲斐とかあった方がいいとは思うし」
「私はビール。アンタは何?」
「え? どういう意味?」
「生き甲斐よ、生き甲斐。何をしてる時に幸せを感じる?」
「う〜ん…まぁ、お風呂に入ってる時は幸せかな」
「それでいいじゃん。お風呂に入る時に、どうやったら気持ちよく入れるか。そのためにどう一日を費やして、一日汗を流して、気持ちよく『今日わたし頑張った〜!』って湯船につかれるか。それだけ考えたらいいじゃん。私はそれがビールなだけ」

(つづく)

f:id:hira2shin:20170603175506j:plain