【前回のあらすじ】
人財プロオフィサーの面接を機に積極的になった女子大生フロ子は積極的に就職活動をはじめたが…
「何か質問のある方はいらっしゃいますか?」
大方の説明を終えた担当者が会場を見回しながら尋ねると、フロ子はすぐさま手を上げた。
どうぞ、とマイクを渡されたフロ子は考えるよりも前に立ち上がっていた。
「ご説明いただいた◯◯様に質問なのですが、現在のお仕事は『人生の大半を費やす仕事』として充実感ややり甲斐を感じておられますか?」
静まり返っていた会場がにわかに騒がしくなった。説明会の担当者は面食らった顔でしばらくフロ子の顔を凝視していたが、しばらくすると会場のざわつきに気づき慌ててマイクをとった。
「そうですねぇ…。こうやって皆さんの前で自社のことをお話させていただいていることはやり甲斐ですし…。会社に対しての質問が出ないということは、私の説明が十分に伝わったと解釈してもよろしいでしょうかね?」
そういってにんまりとフロ子に笑みを送った。説明会担当者のオトナの対応に、会場からは感嘆の声が上がった。
フロ子は質問をはぐらかされたような気がして腑に落ちないまま担当者を見つめていたが、次の質問の手が上がり担当者は安堵の表情と共に、そそくさとフロ子から目線を外した。