【前回のあらすじ】
夢のない女子大生が就職活動で出会ったのは『人と企業をつなぐ仕事』人財プロオフィサー。期待と不安が交差する。
【第二話】
会社説明会の会場は意外にもこじんまりとしていた。
大きなテーブルの前に椅子が五個並んでいた。一番に到着してしまったので思い切って真ん中の席に座っていると、リクルートスーツに身を包んだ男女がポツポツと入ってきた。軽く会釈だけを交わし各々着席していく。
席が埋まりしばらくして定時になり、「こんにちは!」と元気な声で入ってきたのは小柄で優しそうな50代前後のおじさんだった。
「小柄ですけど大林と言います。なんでやねん!ってなるから覚えやすいでしょ?」
そう言うと大林さんはあはははと楽しげに笑った。ややもするとコンプレックスになるかもしれない自分のことを笑い飛ばすその人柄に、緊張の面持ちの就活生たちも気が緩んだのか、部屋の空気は一気に和んだ。
「じゃあ、それぞれの自己紹介をしてもらおうかな? 人数も少ないしニックネームで呼び合うのはどうでしょう? じゃ目の前の席のあなたから」
私からだった。あだ名なんて今まで付いたことは一度もない。でも、あだ名があればもっと色んな人と仲良くできるかもしれない…そう思ってきた。「今日呼び合うだけだから気楽に」そう言って大林さんは私に微笑みかける。
突然だけど私はお風呂が大好きだ。なぜかそのことを咄嗟に思い出した。
「フロ子です。お風呂が好きなので…フロ子」
気づくとそう答えていた。